主人公浦島エイジは過酷な運命を背負っている自分に気づく。
人生の中で最も楽しいはずのこの大学生はやがれ悲劇に巻き込まれていく。
美人の彼女の雪村京花の支えで困難を乗り越えていけるのか?
『親愛なる僕へ殺意をこめて(1巻)』<あらすじ>
どこにでもいる普通の大学生、浦島エイジがある朝目覚めると、隣には美人で同じ大学に通う雪村京花が。
京花に言い寄ってきた不良をエイジが撃退し、それがきっかけで付き合うことになったらしいのですが、その記憶は全くありません。
エイジにはこの三日間の記憶が全くなかったのです。
そしてエイジにはもう一つ秘密が。
エイジは凶悪事件の殺人鬼・LLこと八野衣真の息子として迫害を受けてきました。
しかしそれを知ってもなお、京花のエイジに対する気持ちは変わりません。
そんな中、かつてのLLの模倣犯とみられる殺人事件が発生します。
そして再び四日間の記憶がとぶエイジ。
同じクラスの真明寺麗は、エイジに対し「君は解離性同一性障害、つまり二重人格の疑いがある」と話し、「もう一人のエイジ、“B一(ビーいち)”を放っておくと大変なことになる」と警告します。
そしてエイジが家の物置で発見したものは3000万円もの現金と血痕つきの折れた金属バット。
記憶がないうちに「B一」が何をしたのか・・エイジが不安と恐怖を感じるさなか、エイジの前に刑事、桃井が現れます。
先日の殺人事件の被害者、畑中葉子とエイジが付き合っていたとの証言があり、エイジの関与を疑っています。
もちろんエイジには畑中と付き合っていた記憶さえもありません。
しかしエイジのポケットに入っていたハンカチには、畑中葉子のものと思われる耳がちぎられ、くるまれていたのでした。
京花の身に危険が及ぶこと恐れたエイジは別れを告げます。
そしてB一の正体を探るため、エイジはメモ帳に残された手掛かりをもとに半グレ集団「SKALL」のアジトに潜入するのでした・・。
『親愛なる僕へ殺意をこめて(1巻)』<感想>
『親愛なる僕へ殺意をこめて(1巻)』今後の鍵を握るLLとは
浦島エイジには解離性同一性障害、いわゆる二重人格により凶暴な人格“B一”が同居しています。
しかもB一が表に出ている時の記憶は全く残っていない・・。
失った記憶をたどり、事件を解決していくという設定としては、映画「メメント」のような記憶喪失モノに近いかもしれません。
さらに、エイジは凶悪事件の殺人鬼・LLこと八野衣真の息子です。
このLLが起こした凶悪事件というのが、なんとも胸糞です。
女性四人の遺体には殴る、引き裂く、抉る、刺す、燃やす、磨り潰す、捩じ切る・・とあらゆる拷問の痕跡が残されていたとのこと。
そして犯人の八野衣は焼身自殺をとげる前に「また殺すLL」とメッセージを残します。
しかし、このLLとは何を意味しているのでしょうか?今後の展開でこのLLの意味がキーになることは間違いないでしょう。
そしてこの作品の面白さの一つに、登場人物のキャラクターが挙げられます。
主人公の浦島エイジは童貞でいわゆる普通の大学生。
もう一人の人格であるB一はおそらく、残忍な性格。
そしてエイジの彼女である雪村京花は、ミスキャンパス候補の美人でありながら、エイジの父親が凶悪犯であることを全く気にしない、性格の良さ。
「お父さんはお父さん、エイジ君はエイジ君。あたしはそれでいいと思うな」という台詞は、エイジだけでなく読んでいるこちらもじーんと感じさせられました。
『親愛なる僕へ殺意をこめて(1巻)』キャラクターの心理描写が絶妙
そしてエイジのすべてを知る謎の少女、真明寺麗。
真明寺は「観察と推測」によりエイジが二重人格であることを推察し、B一の名付け親でもあります。
エイジへの執着は半端じゃありません。
LLやエイジの過去についても詳しい様子から、おそらくLLの起こした凶悪事件にもなんらかの関与があるのでしょう。
そして半グレ集団「SKALL」のリーダー、佐井社。売春斡旋や集団リンチなど、やっていることはひどいですが、LLに憧れており、LLの息子であるエイジからサインを貰って喜ぶところなどは少し可愛くも見えます。
他にも、エイジの父の親友で、エイジを養護施設から引き取った現在の父親、口の悪い女刑事桃井など、シリアスな展開の中で登場するキャラクター達の様々な心理描写が物語を厚くしています。
畑中葉子を殺したのは本当にB一なのか?
なぜLL事件になぞられたように殺されていたのか?
その手掛かりはSKALLの中にありそうですが、これも一筋縄ではいかないでしょう。
エイジはB一の謎にたどり着くことはできるのでしょうか?
そしてLL事件の真相とは・・?
*本文中の画像は『親愛なる僕へ殺意をこめて』とは無関係です。
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